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アニメモノたちの夜 ~星野真先生と行くアニメ裏側探訪~ その1:星野真(原作)✕宮松雄大(葦プロダクション・プロデューサー)

『ノケモノたちの夜』原作者の星野真先生と一緒にアニメ制作の裏側を探るインタビュー企画。その第1段のターゲットは企画書を書いた若手プロデューサー! アニメ企画が立ち上げられた時のお話から深堀りします!

アニメ化したいのは
バトルの下地にあるキャラクターの魅力

最初に、この作品をアニメ化したいと思った理由を教えてください。

宮松:まずは前提として、私がこの作品の大ファンだということがあります。ブラックベル家編、ロンドン編と、特に激しいアクションが多くなっていくにつれてどんどん引き込まれていきました。ただその前までは、サンデー(週刊少年サンデー)らしい作品、ジャンル的にはスポーツやラブコメ、ファンタジーでももう少し落ち着いた感じの作品が好きで、今作の後半のような熱気溢れるアクションをメインとした作品はあまり読まなかったタイプだったんです。そこで企画書を書く時に「自分はなぜこの作品が好きなんだろう」と考えたんですが、バトルだけでなく会話劇というか……戦いの相手もしっかり深堀りして、バトルの下地になる部分、キャラクター同士の関係性まで深く描いている作品だというところに惹かれたのかなと思いました。
一方でプロデュース側として考えると、ストーリーだけでなく、何より魅力的なキャラクターが大切です。ファンがキャラクターに共感できる、のめり込める、お気に入りにしてもらえるという部分が、日本のアニメ業界としてのトレンドになっていると思います。また、重要になっている海外展開を考えれば、ダークファンタジーでアクションがあり舞台が海外……ロンドンじゃないですか。ましてホームズまで出てくる。海外の方でも入りやすい作品ではないかと。
そんなキャラクターの魅力、アクション、物語性、舞台、そして作品のテーマなども考えた時にこの作品がベストだと思いました。

星野先生は今作をどの部分から作られたのでしょうか?

星野:まずはキャラクターです。一番初めに出来あがったキャラクターは実はスノウで、最初は彼のちょっとヤンキーな悪魔祓い師という設定が出来たので、そこでお話を作っていこうかなと思っていました。ですが、それでは普通のバトル漫画になってしまいそうだなと考え、彼をちょっと脇に置いたら面白く動くようになるんじゃないかなと試行錯誤して生まれたのがマルバスとウィステリアなんです。ネームを描いているうちに思いのほか彼らが動いてくれて……。目が見えない少女とその横にいる最強の悪魔というかなり凸凹なバディですが、彼らを描いていると勝手に生き生きと動いてくれるというところが良くて。最初はそこからになりますね。

すると、バトルにまつわる部分を考えるのはその後ですか?

星野:そうです。バトル展開を気に入ってくださったとのことですが、私もバトルものが好きだったから少年漫画への憧れに繋がっていきましたし、いつか描きたいと思っていました。ただ何故そこまで自分がバトル漫画を好きなのかというと、命を掛けたやりとりというものにグッとくるところがあるんだといろんな作品を読んでいるうちに分かってきたんです。歴史が好きなんですが、やはり命が掛かった場面に出てくる行動や言葉にグッとくるんです。例えば、戦いに向かないウィステリアが命を掛けなければならない時にどういう動きをするのか、そういう人間の一瞬のキラメキみたいものが凄く見たいんです。それに、私はバトルの中で出てくる大きなエフェクトや必殺技も好きで、その間に交わされる会話……例えば「背中を預けます」とか、そういうセリフもたまらないですね。
ただ、バトルといっても、そこに至るストーリーやエピソードが大切になります。いうなればその全てがキャラクターの魅力を伝えるために用意されていると考えていただいても結構です。いろんな角度で描かれた様々なエピソードが重ねられ、そこにキャラクターを深堀りしてきた部分があるから、読者のみなさんにも様々な魅力が伝わり、先程言ったキラメキやセリフでその魅力が最大になる。ですから、その前提となる会話の部分が好きだと言っていただいたのは凄く嬉しいですね。

「マルバスとウィステリア」
その関係性を最後まで描きたい!

アニメで是非動かしたかったキャラクターはありますか?

宮松:主役であるマルバスとウィステリアですね。個人的には目の見えなくなった戦えない少女が主人公という部分に面白さを感じました。ウィステリアの芯の強さはもしかしたら作品中で一番じゃないでしょうか。

星野:そうですね(笑)。

宮松:その強さも魅力ですよね。同じ部分に製作委員会のみなさんも魅力を感じてくれて、マルバスとウィステリアの関係性をどうすれば上手く見せられるのかという話合いからスタートしました。2人は契約者でありバディですが、既存の友人とか男女の恋愛といった関係性とはまた違いますよね?

星野:じつは私の中で、この2人の関係性に名前をつけるのはやめようというのがありました。受け取り方によっては親子のように見えるかもしれないし、兄と妹かもしれない、恋愛をしているカップルかもしれない。でも、どれにも見えるようで見えない「マルバスとウィステリア」でしかない関係性にしたかったんです。互いに気の置けない相手であり、2人が共に素でいられる状態である「マルバスとウィステリア」という関係性のまま物語が動いている感じです。

そこが今作独自の雰囲気を作っているんですね。

星野:とはいっても、2人の関係性は読者のみなさんがそれぞれに感じたままが正解でいいと思っています。ジャンルにしても、自分で何かだと決めて漫画を描いているわけではなく、いうなれば「ノケモノたちの夜」というジャンルみたいな感じですね。

主人公以外で動かしたかったキャラクターはいますか?

宮松:魅力がある敵も結構好きで、今作だとダンタリオンとルーサーというコンビがいるんですが、裏主人公かと思うくらいめちゃくちゃキャラクターが立っているシーンもあるんです。男臭く泥臭くコンビで暴れまわる、そういった部分は動いたら凄く魅力的になるんだろうなとは思いました。

星野:動くことで作品の魅力がより伝わる部分もあると思います。アニメで動くのが楽しみな部分ですよね。

先日発表されたアニメのキービジュアル第2弾にも2人がいましたね。

宮松:じつは、コミックス第4巻の発売前後くらいに企画を提出したこともあり、ブラックベル家編までをアニメ化するつもりでした。その準備作業をしている途中で「原作漫画が全8巻に決まりました」という連絡をいただき、その報告を受けての会議で製作委員会のみなさんから「連載が同時進行していなくてもこの企画は続けたい」「ブラックベル家編以降のエピソードも好きだ」との話があり、最後までアニメ化しようという決断になったんです。

もしかして、ご自分が好きなルーサーとダンタリオンを動かせるチャンスかなとも思ったりも?

宮松:いやいや、もちろんルーサーとダンタリオンが動かしたいだけではないです(笑)。あの2人って、マルバスとウィステリアの関係にもガッツリ絡んでくるじゃないですか。主役たちの物語を見せるためにもルーサーとダンタリオンが必要だと思ったんです。

星野:連載中でないとアニメ化は難しいかなと思っていたので、「漫画が完結するなら、アニメとしても完結までやりたいと言っていただいていますが、どうします?」と担当編集さんに聞かれた時は驚きました。と同時に、私はすぐ「ルーサーとダンタリオン、シトリも喋って動いているのが観たくない?」と返しました。だって観たいでしょ(笑)。

宮松:すぐにOKをいただけたのも嬉しかったです。私達にとっても大きな後押しになっています。ありがとうございます。

星野:ルーサーとダンタリオンは、私としても思い入れが強いキャラクターであることは間違いないんです。主役ではないから勝手に動いてくれる。マルバスとウィステリアと真逆とはいわないまでも、ブラックベル家編までの登場人物たちとはまるで違うタイプのキャラクターなので、この2人が出ることで作品の幅も広がるんじゃないかなと思いました。なら是非にと。他にも、イベルタの話もたっぷりやりたいという話もありましたね?

宮松:スタッフのみなさんも原作がどんどん好きになっていくので、「ここはたっぷりやりたい」「1話分取りましょう」という話になっていくんです。最後までアニメ化できるのは良かったんですが、悩みが増えてしまいました(笑)。

星野:それしても、まさかこんな豪華な声優さんに演じてもらえるなんて思ってもみませんでした(笑)。スタッフのみなさんだけでなくキャストのみなさんの力もあって、かなり面白い作品になると思います。

宮松:頑張ります(笑)。

漫画とアニメは同じ?違う?
2倍美味しいアニメを楽しむ

先ほど、完成した第1話を観ていたいただいたそうですが、ご自分のキャラクターがアニメで動くというのはいかがですか?

星野:人間同士のバトルというのは自分の頭の中で想像して、その中で漫画として切り取って一番映える瞬間を探しています。私の場合はその中でも、剣と剣が合わさった瞬間ではなくその手前、剣が合う一瞬前を描く形が多いんです。なので、アニメでは自分の漫画では描かなかった剣がぶつかりあった瞬間だけでなく、そしてその後のキャラクターたちの感情まで観られるというのが面白いと思っていますし、楽しみにしています。……これ以上感想を言ってしまうとネタバレになると思うので我慢させてください(笑)。ただ1つだけ、マルバスはタテガミでも戦うわけですが、実際に存在するモノではないモノの動きをどう表現するか難しいよなと思っていたんです。それが拝見したら凄く格好良くなっていて、緩急の感じとかそうそうコレコレって(笑)。私がやりたかったのはコレだという部分を分かってくださっているなと思いました。

原作漫画をそのままアニメ化するというのはなかなか難しいわけですね。

星野:じつは、私は原作漫画が正解だとは思っていないんです。

それはどういう意味でしょうか?

星野:キャラクターたちが生きている世界にカメラがあるとしたら、その中のカメラのひとつを切り取ったのが漫画であり、アニメではまた別のカメラで撮影されている……という感覚が私の中にあります。いちアニメファンとしての私は、物語が同じなら映し方が原作と同じかどうかという部分にあまりこだわっていないんです。

複数台のカメラで同じ物語を撮影していて、カメラの選び方や編集が違うという感じですか?

星野:そうですね。違うカメラで撮影しているのだからそこに違いがあるのは当然だと思っていて、逆に同じ場面を違う視点から観られるなんて2倍美味しいじゃないかという気持ちで楽しんでいます。

宮松:かなり安心しました(笑)。さきほどのタテガミの件も、個人的にはちょっと心配していたんですが、先生に認めていただけて自信になりました。

星野先生も悩んだ
ケモノは難しいのです

キャラクターのデザインについて、先生とはどんなやりとりをされたんでしょうか?

宮松:まずは、キャラクタ―デザインの大沢(美奈)さんからいただいたラフをお送りしました。そこで、先生から「ここはこういう感じで」と修正をいただき、その後またアニメ側から再考したデザインをお送りして、またご意見をいただいて……と言う形を何回かさせていただきました。

星野:私はアニメサイドからこういったものが届くのを楽しみにしていました。ただ、自分が描く時もケモノのマルバスは描くのが難しくて。

先生も難しいんですか?

星野:難しいですね。

宮松:一番最初にお送りしたマルバスは、第1巻の絵柄へ寄せてもっとケモノっぽい絵をお送りしていたと思います。

星野:そうでしたね。それで、第8巻の頃の絵に寄せていただきたいと。マルバスというキャラクターを好きになっていただいている部分って可愛げのある部分も含めてだと思うんです。そこを残しつつどうやって強キャラに見せるのか、そこを最初に抑えずふわっとさせたままスタートしてしまうと、後々キツイんじゃないか。人間ではない怖さと愛嬌がある部分のバランス感覚を掴むのに自分も苦労したので、それと同じ苦労をアニメのスタッフさんたちにしていただくのは嫌じゃないですか。それもあって、失礼かとは思いましたが沢山チェックを入れさせていただきました。

宮松:これは本当にありがたかったですね。これをいただけたので、後々のやりとりでも大きな修正はなく進めることができました。

星野:そうでしたね。マルバスがある程度進んだら、他のケモノもこういう感じかなと大沢さんが感じ取っていただいて。

宮松:即日で返していただいた時もありましたね。

星野:「大丈夫です」の一言だけみたいな。

お仕事をしてきた中で構築された技を伝えている感じですね。

星野:私も漫画を描くために技法書みたいなものを見たりする時があるので、その中の「この部分を大切にしているんだ」「ここが書いてあって助かった」という部分を真似てお送りした感じですね。大沢さんはキャラクターデザインをやられる方なので上手いじゃないですか。なら、こう書いておけば分かってもらえるかなと。

プロ同士の会話なんですね。

星野:そうかもしれませんね(笑)。

宮松:クリエイター同士だから分かる部分もあるかと思います。プロデュサーの立場からだと、制作作業のかなり前段階で言っていただけるのも本当にありがたかったです。

人間のキャラクターたちはどうでしたか?

星野:そっちはほとんど修正はなかったですね。最初から「可愛いです。最高です」と。ただ、アニメ側から「ウィステリアをちょっと幼い感じで描きたい」という話があったので、その手助けになればと豊かな表情を出したウィステリアを改めて描きました。

こちらのイラストですね。

星野:また、ウィステリアには図太いところがありますが、漫画の第1話だけだとまだなかなか見えないんです。なので、後々出てくる部分をここで、辛い目にあっても図太くモグモグ食べるというところで表現して欲しくて、こういう絵を描きました。私はご飯を食べるシーンを大切にしているんですが、漫画ではこのシーン1コマなんです。でも、アニメになると前後の動きというか、芝居が必要になるのかなと。少しでもこれでウィステリアというキャラを掴んでいただければと思いました。

宮松:こういう絵をもらうと「ここは重要だ」と改めて再確認できたということもあります。他にも、スノウのピアスについても先生からイラストをいただいています。

星野:スノウはピアスをつけているのが印象的なキャラクターですが、左右で違うこともあって、自分でもちゃんと決めていないと「どうだったっけ?」と成りかねないんです。漫画でもたまに忘れて編集さんにチェックされたので(笑)。いろんな方が沢山の絵を描かれるアニメの現場なら、こういうものがあるといいのかなと思って。

宮松:漫画だけだと分からない部分もあるので、こういうふうに改めて描いていただけるのはありがたかったです。

星野:ただ、漫画と同じようにリング状のものが3つだとアニメでは描きづらいかなと思い、1つは丸にしてみました(笑)。

アニメのために、新規に考えていただいたんですか?

星野:……いや、本当はピアスが好きなだけです(笑)。漫画を描いている時と今では流行りもちょっと違っていて、今ならこっちの方が単純に格好いいかなと(笑)。

背景や時代考証のための資料は
原作漫画と同じもの?

星野先生は、背景や時代交渉に関する資料も提供されたと伺いました。

星野:じつは作品の背景として嘘があるといけないので、連載中からかなり細かい年表を作っていて、時代感が分かるように日本の年表も横に付けています。この頃の日本はまだ議会も出来ていないとか、この辺でチョコレートが売り始めたぞとか。

確かに、漫画本編でもそういう部分が少し出ていますね。

星野:そういう大きな年表にプラスして、作品の時系列。何日の何時に何が起こったのかという年表も作っています。例えば、ロンドンに着いてから何日しか経っていないとか、自分の頭の中で整理するために必要でした。登場するキャラクターの数も多くなると、誰が何処で何をしているのかも時間で把握していると楽なんです。それに、こういうものを作って楽なのは「空」の作画ですね。その時太陽や月がどう見えるのか、他の場所だとどうなのか。景色が変わる朝方や夕方だとかなり重要になります。アニメだと色の表現などにも関わってくるので役に立つかなと。

宮松:これもかなり嬉しかったです。他にも、参考文献の目録、「このサイトで検索するといいですよ」といったアドバイスもいただきました。先生以外にも、構成の山下さんが当時のイギリスにも興味があったので「この映像資料が」と教えてもらったり。クランチロールの海外スタッフさんからも「この時代にはこれがあった、これはなかった」といった時代考証的なアドバイスもいただきました。

星野:先程観せていただいた第1話でも、自分が思い描いていたイメージと同じ感じの背景になっていて良かったです。

宮松:アニメだと場面転換などのために背景だけのカットも使うので、建物のディティールとか街の雰囲気などが漫画以上に必要になるため、いただいた資料を活用させていただいていると思います。

星野:建物の色は、残っている当時の写真が白黒なので、色による出す時代の雰囲気というのもアニメだからこその楽しみになりますね。

アニメ側に提供された参考文献について伺えますか?

星野:漫画を描くために参考にしたものですね。私がアシスタントさんと共有したものなんですが、そこに「ここはオススメとか」「ここを参考にしました」というメモを付けました。

漫画を描く上で、このくらいの資料が必要になるんですね。驚きました。

星野:人によるとは思うんですが、私は作る上で「見ることになってしまう」んです。歴史が好きっていう部分もあるとは思います。例えば、時代考証を行う上で読み初めた挿絵がない本でも面白く読んでしまいました。その本のどこを使うかではなく、作品を描く上で頭に入れておくという感じです。ただ、頭にいれるとその全てを漫画で使いたくなってしまい、担当編集さんとのネームのやり取りで「これは描かなくても良かったかもね」と言われてしまうこともあったりします(笑)。逆に、挿絵や写真が載っている本に関してはツンドク(積んだままになっている状態)になっている暇がないですね。

なるほど、絵だけでなく作品世界を構築するための文献も必要なんですね。

星野:今作は完全なファンタジーではなくロンドンという下地があるので、そこで嘘を付くことはしない形にしました。一方で、剣十字騎士団などは絶対嘘だろうというものにしています(笑)。

真実の部分とフィクションの部分を上手く混ぜているんですね。

一緒に作っている
だから、出し惜しみはしません!

まさに、漫画とアニメが同じ資料で作られている感じが伝わってきました。逆にいえば、漫画のネタバラシをしている気も(笑)。

星野:それはいいんです(笑)。じつは今、私も色々準備しているものがあり資料の大切さを改めて感じていたので、同じように準備段階のアニメスタッフのみなさんの参考になればと。それに、私にとって初めてのアニメ化ですし、シナリオやデザインでのやりとりの中でスタッフのみなさんの熱意を知って、感謝だけでなくどんな資料でも出そうと。ある意味、出し惜しみをするのはやめようと思ったんです。なので、原作にないキャラクターの表情、もしかしたら分かりづらいかもしれないシーンや感情の部分に関して幾つも絵を描いています。ただ、こういった作業を私は苦労だと思ってはいません。とにかくアニメの制作スタッフさんたちが楽しくやりやすく作業をしてくれれば嬉しいなと思っていて、私も楽しみながら作業をしています。

宮松:本当にありがたく思っています。

星野:漫画を描く時、私は「お仕事だから」だけでなく、アシスタントさんと一緒に「楽しんで作る」ことを大切にしているんです。アニメとなるともっと多くの方々の力が必要で、今作では私を含んだそんなスタッフのみなさんが楽しんで作っていることが、観ていただくみなさんへ伝わるといいなと思っています。

作り手が楽しんで作ると、受け手にも伝わるといいますね。

星野:こういったやりとりをさせていただいたこともあって、私にはアニメを一緒に作っている感覚、一緒に同じ船に私も乗っている気持ちもあるんです。ただ、メインとなるクルーはアニメのスタッフさんですから、私がでしゃばり過ぎるのは避けたいなという気持ちもありつつ、担当編集さんに「これを送っておいてください」と控えめに。コロナ禍でお会いできていない時期でしたので、一緒にやっている感をひとりで楽しんでいました(笑)。

ここまでやっていただいたら、良い作品にしないといけませんね。

宮松:そうですね。「コロナ禍だったのでロケハンに行けませんでした」なんて言い訳にはならないですね(笑)。それに、まだ詳細は言えませんが、先程お見せしたものとは別に先生にお願いしたものもあります。

それは楽しみですね。

アニメで作品の新しい面が見つけられるかも?
リアルタイムで一緒に楽しみましょう!

改めて、今回のアニメ化についてどう受け止めているか伺えますか。

星野:最初は、一緒に『ノケモノたちの夜』を盛り上げていただけるならと、許諾をさせていただきました。その後、プロットや脚本を読ませていただき、原作を凄く尊重してくださっているなと感じたんです。もちろんキャラクターの絵に関しても、原作に対するリスペクトを感じられて……。さきほどお話したキャラクターデザインのチェックに関しても、リスペクト溢れる提案に対して「ここだけ直していただければ……」というお返事になります。私もいちアニメファンなのでまずは嬉しい、ありがたいという思いがあり、その気持ちをどう表していいのか分からないというところがあって、返信としてどんどん絵を描いていたら、担当編集さんに渋い顔をされるということもありました(笑)。

宮松:シナリオのチェックをいただいた時には、チェックだけでなく感想も添えていただいていました(笑)。

星野:今回、アニメが作られていく過程を拝見できてただただ楽しかったです。そして、アニメスタッフのみなさんから良いものを作ろうという熱意を凄く感じていたので、全体的にはアニメスタッフさんたちの選択を尊重する形で私ができることをしたという感じです。

星野先生はアフレコも見学されていると伺っています。現時点での期待感は?

星野:自分の作品という思い入れを抜きにして、本当に面白い作品になっていると思います……ではなく、面白いです。単に「動いている」面白さだけではなく、『ノケモノたちの夜』の新しい面が見つけられる作品になっていると思います。じつは、アフレコ現場を見学させていただいた時に、原作者とは思えない感想が素でぽろっと出たんです。「おもしろいですね」って(笑)。このスタッフさんたちに託して本当に良かったなと思います。今のタイミングで原作者としてやれることは何もありません。ただただ完成を楽しみに待つ段階です。後は一視聴者として、ファンのみなさんと一緒にリアルタイムで観られるのを楽しみにしています。