アニメモノたちの夜 ~星野真先生と行くアニメ裏側探訪~ その2:星野真(原作)✕山下憲一(脚本)
『ノケモノたちの夜』原作者の星野真先生と一緒にアニメ制作の裏側を探るインタビュー企画。第2段は、シリーズ構成を担当した脚本家の山下憲一さん! 作品の魅力だけでなく、物語作りという共通の立場からのお話は必見!(※少々ネタバレを含みます)
作品愛が勝ち取った全13話
―最初に山下さんへ葦プロから企画書の相談があったそうですね。
山下:まだ小学館さんへ企画書を持ち込む前の段階でしたね。宮松さんが「何かアニメでやりたいものはないか」と聞かれて一番最初にあげたのが『ノケモノたちの夜』だったというお話をいただいて、それだけ情熱があるなら僕も頑張って力添えできればと。そこから原作漫画を拝見しました。じつはその前に、お名前で検索してヒットしたのがpixivにあったプロトタイプ的なお話で……。
星野:『森の悪魔の暇つぶし』ですね(笑)。読者さんに喜んでいただいているので、削除せず今も原型として残しているんです。
山下:その後に『ノケモノたちの夜』を拝見したら、より(週刊少年)サンデーらしい漫画になっていました(笑)。第1話の完成度がかなり高いなと思い、ここからどういうお話になっていくのかも楽しみになりました。作品の冒頭からマルバスとウィステリアの関係も出来上がっているので、この話のアニメ化なら過不足なくできるなというのが最初の感想でしたね。
―原作を読まれて印象的だったセリフはありますか?
山下:いっぱいあるので絞りにくいんですが、やっぱり最初の契約の部分ですね。ウィステリアが決断するシーンが一番好きで、これでアニメ化はいけるぞと。
―シリーズ構成という立場で、最初にしたことはなんでしょうか?
山下:僕自身というより、このアニメ化をどうするかというときに、どこからどこまでをアニメにして、どこをクライマックスにするかをまずは決めないといけないんです。大きな山としてマルバスとウィステリアの関係も良かったんですけど、個人的にはモリ—とハリエットの話「リバーサイド・マーダー」を単発でやりたい。終盤に出てくる副団長の話も1話として立てたいなと思ったんです。そんなことが頭の中にあったので、製作委員会さんに話数毎の割り方(シリーズ構成案)みたいなものを提出させていただいて「全12話だとちょっと足りないんじゃないか」「このままだと、どっちかのエピソードを削らないといけないかもしれません」「どうしてもあと1話分欲しい」という話をさせていただいただきました。
―1クール作品での1話は大きいですね。
山下:それに、1話の脚本を書き始める前にシリーズとしての流れを逆算しないといけないというのもあります。しかし、その時点で全12話というのは覆えせない可能性があるという話でした。もちろんビジネス的なお話もあったと思いますが、委員会の方たちも含めてこの作品が好きだということもあり「このエピソードがないともったいないんじゃないか」という話をしてくださって、「じゃあもう1本増やしてちゃんと構成ができるようにしましょう」という決断をいただけたので僕としては凄くやりやすかったです。これはライターひとりの力ではどうしようもないことなんです。みなさんがこの作品をどうしたいか。みなさんが熱意を受け止めてくれたからだと僕は思っています。
アニメで広がる作品世界
―脚本の作業の中で、原作漫画は何回くらい読まれるものなんでしょうか?
山下:ええ〜。わからないです(笑)。最近は電子書籍があるので、以前より紙の本(コミックス)に傷が入らないのがちょっといいですね。
星野:脚本の打ち合わせに参加した担当編集さんに聞いた話ですが、監督から「このシーンって、コミックスのどこらへんでしたっけ?」みたいな話題が出ると、山下さんが担当編集さんより先に「ここです」と言われるそうです(笑)。ありがたいですね。
山下:先生が作られたものを受け取って、その先に持っていかないといけないわけですから。作者さんに敵うものではないですけど、私たちが出来ることは何回も読んで自分の中に入れていくということだと思っています。
―今作では主人公が2人います。脚本を書かれる中でキャラクターへの思い入れに違いはできるのでしょうか?
山下:どうなんでしょうね(笑)。
星野:難しい質問ですね。
山下:私も男の子なので可愛い女の子は好きですね(笑)。
―どちらのキャラを立てるかで見せ方も変わるのでは?
山下:そうですね。しかし、ウィステリアは目が見えなくなったことでより強くなりましたよね。もともと芯が強い子じゃないですか。
星野:そうですね。
山下:食べる時はどんな状況でもガツガツ食べるし(笑)。よく覚えているのは、第1話を書いた時に、初稿の段階でト書きで足していたところがあったんです。ガツガツ食べると。そこを読まれた星野先生からイラストが送られてきて……。
星野:そうでしたね。
山下:原作者さんからこういうアンサーが来たというのは、間違っていないんだ。こういう子で良かったんだと(笑)。
星野:はい、大丈夫です(笑)。
山下:ガツガツといっても意地汚い食べ方ではないんです。生きるための食べ方なんです(笑)。
―アニメになることで、補完される部分もあるんですね。
山下:じつは、第1話では場面として少しだけ足した部分があります。
星野:そうですね。そこも楽しみにして欲しいです。
山下:メインであるマルバスとウィステリアの関係はもう出来上がっているので、僕がやることは、これを1本のアニメとしてどうやって立たせるかになります。監督は一番最初に「第1話の売りとしてアクションを増やしたい」とおっしゃっていました。であれば、出来上がっているキャラクターの関係性が結実するところに全てが濃縮されるようにお話を構成する流れにもっていくこと。どこでどう収束するかは原作漫画でも見えていたのでやりやすかったですね。
星野:放送前なので詳しくは言いませんが、第2話でも原作にはない部分を広げていただきました。
山下:アニメを観られて驚くかもしれませんね。
星野:私は凄く嬉しかったです。じつは、私もとあるキャラクターのアクションをもっと描きたかったんですが、ページ数の都合もあって入れられなかったんです。それを、アニメでは小道具も上手く使って拡げてくださいました。私からみても「このキャラはこんなことはしない」なんて違和感は一切なく。あれはテンションが上がりました。
山下:あれは監督もやりたいことが見えていたし、僕がやりたいことも一致していたんです。監督もiPadに簡単なラフを描いてきて「ここはこうしましょう」「なら、ここはこの角度で」と。
星野:こんなに良い広げ方があるのかと。放送でどうなっているのか楽しみです。
原作者チェックは感想がメイン??
―第1話の脚本を読まれた時の感想を伺えますか?
星野:まずは凄く楽しみに待っていました。ひとりのアニメ好きとして脚本の作業工程から見せてもらえるのが純粋にワクワクしていたんです。こんなにお仕事を見せていただいていいのかって。そして第1稿をいただいて、読んでいて面白かったんです。脚本って小説でもないし、かといって箇条書きというものでもなく。手前味噌抜きで面白いと思いました。ただ、私はこの脚本をよりよくするためのチェックをする立場なので、もっと良くしていただきたいと思ったところは書いて。でも、自分が「ここは良い」と思ったところは良いとお伝えしたいので、単純な感想となる部分も入れて……。
山下:ありました、ありました(笑)。
星野:青文字は意見で、オレンジは感想みたいな(笑)。これ、第1話だから結構長く書いていますね。
山下:そうですね。その後はだんだん短めになっていました。
星野:シーンごとに感想を書かせていただいた時もありました(笑)。
―こういった形での原作者チェックというのはよくあるんですか?
山下:いや、あまりないですよ(笑)。気になった箇所について書いていただくケースは多いですけど、問題ない場合は「OKです」という簡単なお返事をいただくのが普通です。「ここが面白かったです」「ここが良かったです」と書いていただくことはあまりないですから、私だけでなく現場のモチベーションになりました。
星野:良かったです(笑)。
―認めてくださっているというだけでなく、楽しんでくれているのが伝わってきますね。
山下:そうですね。そういうバックが帰ってくるというのはちゃんと読んでくれているんだなというのもダイレクトに分かります。お忙しいのに大変助かりました。
―特に感想を多く書いてしまった話数はありますか?
星野:ダイアナ編ですね。原作コミックスだとまるまる2巻分あるので、この量を脚本へ落とし込むのは大変だろうなと思っていました。私にとっても大切なエピソードのひとつなので、ダイジェスト風になってしまうのも嫌だなと心配していた部分もあったんですが、届いた脚本は本当に面白く、大切な部分もしっかりあって、読んでいてテンションがあがりそのテンションのまま感想を書いてしまいました(笑)。
山下:いや、ありがたいです。
星野:それに「ファミリーツリーの画を演出に入れます、実際の映像になった時にこういうものになります」ということも書いてあって、おしゃれだなと。原作でもやればよかった(笑)。追加で入れていただいた原作にないセリフについても、「気に入っています」とお伝えしたいなと思い、感想だったり落書きをお送りして(笑)。
山下:これはハラダ(サヤカ)さんに担当していただいた話数ですね。
3人の脚本家の特徴と無茶振り
―今作の脚本は3人で担当されています。そのチョイスは?
山下:監督の山本(靖貴)さんは自分でも書きたいエピソードがあると言っていたので「じゃあ書いてね」と。その後、僕は3人位でちょうどいいかなと思っていたので、山本さんに「誰かいい人を紹介してください」とお願いしたらハラダさんを勧めてくれたんです。ハラダさんとは山本さんの監督作品で一度ご一緒していて、もし山本さんから誰の名前も出なかったらハラダさんがいいかなとは思っていたので「是非お願いします」という流れになりました。
星野:つい先程、編集担当さんから私が「ハラダさんの書かれたアドリブの部分に異常に反応されていました」と言われました(笑)。原作になかった部分を広げてくれていて、そういうプラスαのセリフが上手い方ですよね。
山下:そこは発注する時にちゃんと考えました。ハラダさんには、原作がそこまでギチギチでないところの話数、膨らませる余地があるところを渡せば、きっと書いてくれるはずだと。
星野:おおっ!
山下:逆に僕はギチギチなところを、どうしようかと。
星野:メインストリームの大変なところですよね。
山下:だから、先程の「リバーサイド・マーダー」も副団長の話も僕が書きたかったんですが……。自分はちょっと他のところをやらないといけないなと(笑)。シリーズ構成はわりとそういう役回りになりますね。
星野:芯の部分を山下さんに担当していただくからこそ、他の方はアドリブも入れられるんですよね。
山下:お二人には無茶振りに近いお願いをしている部分もありますが、信頼していますし助けられています。山本さんは特にアクションにこだわって書かれていて、ハラダさんの場合は長くなる脚本にも自分の書きたいセリフを書いてくるタイプになります(笑)。
星野:特徴があるなと感じました(笑)。
―山下さんは山本監督とはこれまでにも何度か組まれていますね。
山下:10年以上前からの付き合いになるので、ちゃんと本が読み込めて的確な指示が出せる方ですね。だからご自分でも本が書けるようになったんだと思います。僕としては山本さんと組むとやりやすいですし、一度組んだオリジナルの時も色々アイデアを出してくれたし。僕との関係だからかもしれないけど、無茶な直しも来るんですよ(笑)。
星野:山下さんならやってくださるだろうということですね(笑)。
山下:例えば第1話もそうだし、第2話もそうだったんですけど。「原作にはないところを作ってください」「ここのアクションはもっとこうしてください」と結構言ってくるので「ああ、来たな」と(笑)。人によっては「ここまで直すの?」というかもしれないけど、僕は「どんとこい!」という感じで楽しみながらやっています。
漫画とアニメのテクニック
星野:素人の質問で恐縮ですが、脚本で書かれている文字数が何分になるのか、これはやってらっしゃらないと掴めないですよね。筆がのって書いてしまうこともあると思います。アクションが多いエピソードと、会話が多いものとで違いがあるんでしょうか?
山下:アクション作品になると多くなりがちですね。ト書きばかりになるけど「これ30秒もかからないよね」とか。人によるかもしれませんが、僕の場合アクションシーンは気にせず書ききってしまって、全部書いてからどうしようか考えます。途中で気にすると良くないんです。
星野:なるほど。
山下:全部書いてからぎゅっと縮めた方が面白くなるというのは、先輩から教わったことですね。話が逸れますが、別の仕事で脚本を書く新人さんがいたんですが、15分ものなのでこの体裁だと8ページくらいなんですけど15ページくらい書いてきて。でも、それでいいんです。後から切っていくのは誰でもやることなので。その方が自分の書きたい部分、どうしても残したい部分、自分のやりたいものが出てくるというか。
―星野先生はネーム作業の前に、メモなどは取られるんでしょうか?
星野:文章で書き起こしてから始めるタイプです。思いついたエピソードやセリフを文字で書いて、それをページに割り振って……。その作業の中で、やはりどうしても削ることになりますね。でも、削って削って、削っていった方が洗練されるなという感覚があります。
山下:思いの丈がどんどん凝縮される感じですね。
―今回の脚本作業で、一番多く稿を重ねた話数は?
山下:たぶん第1話か第2話が一番稿を重ねた気がします。第7稿までいったのかな? もちろん第3稿くらいで決定した話数もあるんですが、するとみなさんが「本当にこれでいいんですか?」って、変な感じになっていました(笑)。
―第1稿の段階で一番長くなった話数などは覚えていますか?
山下:これもやはり第1話が一番長くなった気がします。たぶんみなさんに見せる前に削っていますけどね。
星野:全13話になったとはいえ、私はコミックス8巻分を1クールに入れ込むなんてあまりにも無茶振りじゃないかと思っていました。私の師匠となるアシスタント先の先生は「コミックス4巻で1クールくらい。俺はそれを狙って作っている」とおっしゃっていましたし。
山下:それは作りやすいかも(笑)。
―4巻というと、どのくらいの連載期間になるんでしょうか?
星野:週刊連載だとちょうど1年くらいですね。
―1年の連載が、アニメになると3ヶ月に。
星野:そうなんです(笑)。なので、これは相当な無茶振りだなと思ったし、「果たして実現出来るのか?」と心配していました。ところが、いただいた脚本の1話1話が面白くて。「え? 本当に? 凄くない?」って。それでいて、抑えていただきたい部分はちゃんと抑えていただいている感もあって、これが職人かと。
山下:それはお仕事ですから、というとあんまりなんですけど(笑)。オリジナルの時は本当に自分も苦しみながらやっていますので、原作があるものを受け取った時は「オリジナルを書いていたらこの子たちはどうして欲しいのか……」というのを常に思い浮かべながらやっています。使い分けではないですが、スタンスが変わりますね。
星野:そうなんですね。
―他に山下さんへ伺いたいことはありますか?
星野:やっぱりテンポの部分かな。漫画は画面の上で時間軸をかなり好き勝手に支配できるのが特徴ですが、アニメでは難しいですよね。特にキャラクターの感情の溜めの部分。漫画だと大事な部分で書き込みを増やして……という手法を使うんですが、アニメだと時間を溜めることで表現したりしますよね。そういう部分を脚本上ではどうされているのかなと。こうして欲しいという要望は入れているんですか?
山下:「ここは時間をかけて」なんて野暮なことは絶対やらないです(笑)。ひとりひとりやり方は違うと思いますが、僕はそのセリフが一番立つようにお膳立てして構成する感じですかね。お話の流れの中で的確な場所に置くことでこのセリフは立つだろう、というように。本当にその時のお話の波を作るという感じですかね。
星野:お話の波ですか。
山下:週刊連載だと4話分をまとめてアニメ1話に、というのがよくあるパターンだと思います。そうすると山(漫画の1話毎の物語の波)が幾つもあるので、30分……本編だと20数分のテレビアニメの中でそのうちのどれを一番立てるのかということになります。どれか1つにピークを絞って、そこに焦点を当てる。今作の第1話でいうと、まさにウィステリアが契約の対価として自分の目を捧げるセリフに集約するようにもっていく。それは脚本の中で自然とやっているんです。あとは演出家さんを信頼して。脚本って設計図でありお膳立てなんだと思っています。あとこれは学生時代に読んだ脚本の入門書に基本の基本として書かれていたことですが「波をひとつづつ作っていって、一番高い波を番組のピークにくるように作れ」。これはもう感覚ではなく技術に近いものだと思います。
―先程伺ったように、毎話数でそういった推敲を何度もされているんですね。
山下:ちょうど手元で第1話の初稿のデータを開いているんですが、ウィステリアの「私と一緒に生きてください」はどこに置くか凄く悩んで、何度も書き直している履歴が残っていますね。一番大切なセリフだから、一番立つ持っていき方、アクションを含めてどのタイミングで言ったらいいのかと、初稿だけでなく第2稿からもちょっとづつ変えながら作っています。絵だけではなく流れの中でどこにあるのが一番いいのか。それは前後の流れも関係してきますので、結構検討していましたね。今見返してそれは感じました。
星野:じつは、毎回あの熱量で脚本への感想を書くと、準備している作品に支障が出ると担当編集に心配されて、私の手元に届いてる脚本は、初稿と決定稿だけなんです。なので「言いたいことは初稿で全部言ってください」と(笑)。
山下:決定稿に至るまでに色々変わっていたんです(笑)。
星野:その間を知らないので「おおっこうなるんだ」と、余計に楽しめたかもしれません(笑)。
アイスにチョコ、調べることで作品世界が作られていく
―作品背景について、山下さんからも幾つか資料を提示したと伺いました。
山下:僕からは、ドキュメンタリーなんですが「カラーでよみがえる大英帝国」という番組を。1890年くらいから1900年くらいの映像をカラー化した番組なんですが、こういう番組を仕事中に流しっぱなしにして観ているので「そういえばあれがあったな」と。東西を問わず結構そういうのを観るのが好きなんです。たまたまなんですけど、この作品の脚本打ち合わせをしていたのが水曜日の夜だったんです。終わって帰るとBSハイビジョンで「名探偵ホームズの冒険」がやっていてハマって観ていました。
星野:ああ、まさに同じ時代(笑)。
山下:元々好きではあったんですが、先程のドキュメンタリーも含めこの時代の雰囲気をさらに確認できたのは良かったですね。
―実際にあった時代や風景を入れ込む作品の場合、脚本の段階でも何か気をつけているんでしょうか?
山下:それはありますね。第1話だと、スノウが居る公園にとある銅像があるかどうかは確認しましたし、あの時代にビックベンが夜でも鳴っていたのかどうかもちゃんと調べています。
星野:アイスクリームもそうですね。
山下:そうでした。あの時代に本当にあったのかどうか。
星野:チョコレートは調べていましたが、あの時代にアイスもあったんですよね。進んでる(笑)。しかも、マルバスの「最近流行っているらしい」というセリフも入っていて。「この一言があるだけで、観ている側の入り方が全然違うよな」と思い、流石だなと思いました。
山下:マルバスは、あの時代に流行り始めたというのを見かけていたんですね(笑)。
星野:そういえば、銃についても調べられたとか?
山下:連射できるかどうかですね。この作品では監修という立場のスタッフがいるわけではないので、自分がちゃんと調べておかないと後で……間違ったことをやってしまったら自分が嫌な思いをしますから(笑)。でも、自力で調べる楽しさというのもありますね。
星野:そうですね。
―他に調べられたもの、調べたかったものはありますか?
山下:行きたかったなぁロンドン(笑)。時期が時期でしたからね。ストリートビューで行った気持ちになりました(笑)。
―後々このアニメをご覧になった方が聖地巡礼などで行かれたら嬉しいですね。
星野:そうですね。
山下:トラファルガー広場とかも出てきますので。
漫画、アニメ、どちらから観ても2度美味しい作品です
―山下さんは、脚本の後で作られる絵コンテなどはご覧になるんですか?
山下:送っていただければ拝見しますが、今回は見ていません。お任せですね。アフレコにもお邪魔していないので、PVで初めて声を聞いて「おおおっ!」となりました。すでに視聴者になっています(笑)。シリーズ構成なので今作では最後まで脚本も読んでいますが、各話脚本とかで入った時には、自分の担当話数が終わったら後の話数の脚本はあえて読まず、放送を楽しみにしていることが多いですね。
―今作で動くのを楽しみにしているシーン、キャラクタ−は?
山下:幾つもありますが、シトリがドラゴンへ変化していくシーンかな。原作では一瞬ですが、アニメならもう少し時間が取れるかなと。どういう絵になるか楽しみです。他にも、成長したウィステリアがどういう絵になって、竹達さんがどう演じられるのか、とても楽しみにしています。
―放送を楽しみにされている方へメッセージをお願いします。
山下:お話を作るという段階は、だいぶ前に終わってしまったので、この取材は同窓会のようで楽しかったです。改めて思うと楽しい現場だったし、辛いところもそんなにはなかったと思います。なので、スタッフみんなでワイワイ作って盛り上げようという思いが必ず映像に出ていると思いますので、そこを楽しみにしてください。
―今回お話を伺っていると、かなり楽しい現場だったようですね。
山下:本心から楽しかったと思えるのは放送が始まり、最終回まで観たときだと思います(笑)。
―星野先生からも一言お願いします。
星野:今回伺った脚本の作業でもそうなんですが、「削っていく」というのも悪い意味ではなく、より芯の部分が際立っていく、磨いていく感じですね。全13話のどこも見落としていい部分はないので、この美しく磨ききった全13話を是非観てほしいです。
山下:アニメスタッフとしては、泣く泣く削った部分も面白いので、是非原作漫画を読んでほしいです(笑)。
星野:ということは、アニメでこの作品に初めて触れた人はその後に原作を読めば2度美味しいということですね(笑)。
山下:そうですね。
星野:もちろん、漫画から入った人もアニメを観てさらに美味しいと思っていただけるはずです。漫画とアニメを相互にいったりきたりするのも結構楽しいんじゃないでしょうか。ちょっとした違いを見つけて、それを新鮮味として味わえると思います。どっちから始めても大丈夫!