声優インタビュー
小西克幸(マルバス役)×諏訪部順一(ナベリウス役)
アニメ『ノケモノたちの夜』シリーズ後半! マルバス役の小西克幸さんとナベリウス役の諏訪部順一さんに、それぞれのキャラクターについてお話を伺いました。前回アップした竹達彩奈さんと今柳りささんのインタビューに続き、お楽しみください。
時が止まっている悪魔に求められたのは「若さ」
―まずは、演じられているキャラクターの第一印象を教えてください。
小西:赤いライオンです(笑)。赤い鬣のライオンでめっちゃ強そうやんこいつ、みたいな。でも、セリフを見ると結構クールな感じで、オーディションの前に原作は全部読ませていただきましたが、どちらかというとクールで心を自分から積極的に動かすようなタイプじゃないっていうか、長い時間をずっと生きてきているので自分の中でも時間が流れてないような感覚なのかなって。本人は「退屈している」って言ってましたけど、そういう意味では冷静とかクールだったり、そんなイメージはありましたね。それに、いただいた資料に大悪魔とも書いてあったので、めちゃくちゃ強い悪魔たちのうちの1人、そんなキャラクターなんだろうなと思いました。
―その印象は、アフレコで変わりましたか?
小西:それが、強いキャラクターとして、威厳だったり、そこはかとなく出る威圧感だったり、そういうのがちょっとあった方がいいのかなと思って作っていったら、「若くしてください」って言われたんです(笑)。そこから修正ですよね。とはいっても、若僧になりすぎちゃうとキャラクター自体が弱くなってしまって、ウィステリアとの関係性などが物語が進んでいく上で薄っぺらくなってしまいます。その場にいるだけで強いっていうイメージにはなった方がいいのかなという考えもあって、そこをどうやって演ろうかな、どのくらい若くしたら……と思っていたんですが、第1話のテストで「若くしてください」と言われ、第2話のテストでも「若くしてください」と言われ。第3話では特に何も言われなくて「今日大丈夫ですか?」「あ、いや、大丈夫でした」って監督に仰っていただけたので、そこからちょっとずつ自分の中でキャラクターのスタート地点の軌道修正ができていったかな。
―ナベリウスについて諏訪部さんはどんな第一印象でしたか?
諏訪部:オーディションを受けた時はまだ原作を読んでいませんでした。いただいたセリフと数行のキャラクター説明から、粗暴な感じだけれど、どこか優しさを感じるようなところもある……といった印象だったので、そこからイメージを膨らませました。結果、受かりましたので、間違っていなかったようです(笑)。しかし、初登場回の収録でテストを終えたら「ちょっと悪過ぎです。あと、もっと若くしてください」とダメ出しされました(笑)。
小西:みんな通ってくる道なんですね(笑)。
諏訪部:大悪魔という設定に引っ張られ過ぎたのかもしれません。長い時を生きてきていますし、やはり威厳みたいなものも表現しなければならないと思い、圧がある感じで演じてみたところ、強面になり過ぎたようです(笑)。まぁ、修整はすんなりできたので、以降は自然に演じていくことができました。
―それぞれのパートナーについても伺わせてください。
小西:ウィステリアはとってもいい子です。
諏訪部:本当、そうですね。
小西:竹達さんが彼女の持ってる芯の強さを見事に表現されているので、子供としての弱さはあるけど芯はしっかり強くて、こっちに届けてくる思いがすごく強いんですよね。だから、ウィステリアってなんか素敵な子だなって思います。マルバスだからというわけじゃなくて、そういう子に出会ってお話したら、やっぱり興味を持つでしょうね。マルバスもきっと、そういう彼女の持つ強さだったり光ろうとしている何かに自然と惹かれていったんだと思うんです。
―ダイアナについてはいかがでしょうか?
諏訪部:ウィステリアは一見儚い感じがするけれど実は芯が強いタイプ。対するダイアナは、強いことは強いのですがちょっと危ういところ芯にある感じ。ですが、自身の弱さと向き合い、それを乗り越えた彼女は、大きく成長遂げたように思います。ブレることのない高潔な心も含め、彼女のことをナベリウスはとても気に入っているようですね。
興味がない、めんどくさい相手
―お2人が演じてる悪魔についてはそれぞれどのように見ていますか?
小西:マルバスから見てってことですよね。特に興味ないです(笑)。マルバスって他の悪魔にはそこまで興味がなく……。何百年も前はちょっとしたことで、ああだこうだってうだうだ言い合ったりすることもあったとは思うんです。けど、なんかそこまで深い関係性があるのかっていうと、そうでもないと思うんです。時間がずっと変わらずに進んでいく中で存在というものが当たり前になりすぎて、その中で忘れているというわけではないですけど、本人たちも会ってないみたいですし、何かが進んでいくわけじゃない。止まったままな気がします。仲間とか、同じ悪魔だからみたいなものはないんじゃないかな。永遠っていうものがあったとして、最初の1年、2年とか10年とか……もしかしたらそこでは関係性があるのかもしれませんが、100年とか200年経った時にじゃあ変わるのかって言ったら何か切っ掛けがないと変わらない気がして。それがこの物語のスタートなのかなと思うんです。
―そういう意味で「あまりが興味ない」と。
小西:難しいですね。興味ないといえば興味ないし。相手にしていないといえば相手にしていないし。お互い不可侵みたいな感じかな。「崩国の十三災」は不可侵みたいな部分もありますよね。
―諏訪部さんはいかがですか?
諏訪部:ナベリウスは、とりたててマルバスだからどうこうという格別のものはないのでは? 同じ「崩国の十三災」として、存在も能力も認めているようではありますが。まぁ、「融通がきかない」「面倒くさい」ヤツ、という印象は持っているようですね。
―諏訪部さん自身はマルバスというキャラクターをどのように見ていますか?
諏訪部:同じ感じです。面倒な感じのヤツだと思います(笑)。大きな力を持っているけれど、結構不器用。悪魔だから仕方がないのかもしれませんが、人間の心の機微にも疎いですよね。その辺はナベリウスの方が上手で、うまいことやっている感じがしますね。
―小西さんからみたナベリウスはいかがですか?
小西:台本を読む時からマルバスとして入っちゃっているので、最初からそっちで考えちゃうんです。だからなかなか難しいんですけど……。まあ、ダイアナの番犬です(笑)。
―先に、竹達彩奈さんと今柳りささんにもインタビューさせていただいたのですが、まさに「犬」と言っていました(笑)。
小西:なんかいい奴なのかなって気はしますね。契約があるとはいえダイアナのためにあそこまで考えて動いてる。そういう意味では、契約云々じゃなく心がちゃんとあって動いてる。そういう風に僕には見えます。
―ステレオタイプの悪魔とは違うのが面白いですね。
小西:僕ら(マルバスとナベリウス)の場合ですけど、やっぱり人間と一緒にいるので、ものの考え方だったりとか感じ方だったりとか……。演じながら「こういうことが楽しいんだ」「この感情はなんだろう」「ああ、あいつに嫉妬してんだ」とか、なんかちょっとずつ人間ナイズじゃないですけど、近づいてきているのかなって気はしますね。
諏訪部:一緒にいる時間が増えれば増えるほど、少なからず影響は受けているのではないでしょうか。
小西:僕(マルバス)は特にそうですね。
諏訪部:そうだね。
小西:あんまり喋っていると(物語の中でキャラクターがどうなるのかの)答えになっていっちゃうので全部はお話できないんですけど(笑)。長く生きている彼らとしたら、最初は興味半分でいろんなことやっていたけど、それも同じことの繰り返しだからどんどん飽きていって、どんどん1人になって、時が止まって。ウィステリアに出会って、またちょっと動き出してみたいな……。大雑把ですが、なんかこんな感じなのかなって思うんですよね。そこから……例えばスノウが出てきて、スノウのことばかり言うウィステリアに対してちょっとヤキモチを焼いてしまったりとか。でも、マルバス本人は「これはヤキモチなんだろうか?」とか、そういう感覚はないわけですよ。「なんだろうこれ?」っていうのがずっと続いていく。自分の中で感情とか忘れているんじゃないですかね。だから、凍っていたものがどんどん溶けいく、止まっていた時間が動き出すみたいな感じかな。
諏訪部:ナベリウスは「犬」みたいな感じと言われているようですが、沸点低めのナベリウスをダイアナが御しているようなところはあるかもしれませんね。とはいえ、いろいろと先回りをしてナベリウスはダイアナを導いている。保護者みたいなところもあると思うんです。ダイアナに対する情から、彼女を守ってあげているように見えなくもないですが、ナベリウスが考える「かくあるべし」みたいなハードルを与えて、それをダイアナが見事に越えられたら「よしよし」してあげているようにも見えます。実はむしろ逆なんじゃないかなぁと思うんですよね(笑)。
―ある意味、対等な立場にもみえますね。
諏訪部:本当の意味で対等かどうかはわかりませんが、そういう感覚をお互い持っているかもしれませんね。認め合っているのは間違いありませんので。
後半へ向け、物語はどうなる?
―ここから後半、放送や配信を楽しみにしているみなさんへ、どんな展開になるか紹介していただけますか。
小西:あの大悪魔マルバスがピンチになります。大悪魔が危機一髪! これだけだと何のことか全くわかんないですね(笑)。マルバス的なことで言わせていただければ、ウィステリアと契約して、彼女と一緒に旅を始めて、この物語が目指してるところの執着点はどこになるんだろうかっていうことと、やっぱり2人の関係性ですよね。ウィステリアからいっぱい貰ってると思うんです。よく彼女のことを「君は強くなったね」とか言うんですけど、マルバスもそれと同じくらい沢山いろんなものをウィステリアから貰っているので、その2人の関係性だったり。2人の行く先がどうなっていくのかっていうのを見ていただけると嬉しいです。
諏訪部:ブラックベル家絡みのエピソードが終わったらナベリウスとダイアナとはさよなら……っていう雰囲気もありましたが、後半戦も彼らは引き続き登場しますので、どうぞよろしくお願いします。新キャラも続々出てきますよ! 最後まで良いテンションを保って物語は続いていきますので、ラストまでお付き合いいただけますと幸いです。
小西:いろんな勢力が出てきますが、それぞれにちゃんとバックボーンも描いていて、この1クールの中に全部ギュッと凝縮しているので、そういうところも面白いかもしれないですね。ただ出てくるような、意味のないキャラクターはたぶんいないんじゃないですかね。見始めたらノンストップな感じがすると思います。
諏訪部:原作未読の方も、既読の方も、問題なくご覧いただけるアニメです。相互補完できるような間柄ではないかと。ぜひ併せてお楽しみください!
―ありがとうございます。今後のキャラクターの活躍、そしてどんな結末になるかも楽しみにしています。